かわら版

今月の本(戦記からエネルギーに政治まで6冊)~感傷を排して世界を見られるか!~

2018年5月3日  

今月は何冊か紹介させていただきます。

  1. 『25歳の艦長海戦記~駆逐艦「天津風」かく戦えり~』森田友幸 著・光人社NF文庫\571+税 です。これはタイトル通り旧海軍最年少の艦長を経験したご本人が書いた実録戦記で、大東亜戦争の全体像のなかで、全く勝ち目のない戦を如何に戦い抜いたかの記録です。面白いというよりは、敗戦の本質を最前線はどう理解していたかと受け止めるならば、まるで経営に失敗した企業がもうダメだと分かっているのに、僅かな希望に賭けて商売を継続しているようにも見えてきます。改めて戦争とビジネスが如何に似たものかを理解することができました。
  2. 『エネルギー大潮流~石油文明が終わり、新しい社会が出現する~』クリストファー・フレイビン+ニコラス・レンセン著、ダイヤモンド社\2400です。ちょっと古くなりますが、内外に大きな影響を与えた1冊です。1995年に和訳が出たこの本は、日本のエネルギー業界関係者とマスコミに大きな影響を与え、石油の時代は終わったという今の日本の常識の元となった本です。23年後の今読み直してみると、時代の流れは概ね当たっているものの、事実があまりにも違っていることに驚きます。仮説としては面白かったが、現実の社会で起こっていることは、その通りではないという意味では、ジュール・ヴェルヌの小説並みの面白さ、読みやすさでした。まあ、油田投資をしている身としては、非常に勉強になりましたが、内容は納得できるものではなく、23年前の考えを知ったが今はどうなのかという点では疑問が残りました。そこで次の本を読みました。
  3. 『石油の終わり~エネルギー大転換~』松尾博文 著、日経新聞出版社¥1800+税という、1月に出たばかりの本です。著者が日経の編集委員会兼論説委員だという最新、ハイレベルの本を大きな期待感を持って読みました。事実を積み重ねていく手法にはさすがというしかありませんが、実際に米国の油田・ガス田を見てきたばかりの私にとっては、少し一面的な捉え方をしているかなとも感じました。しかし国内エネルギーの全量を輸入に頼っている日本としては、国民がエネルギーについて学ぶことが必要であり、いま世界のエネルギーがどんな方向に向っているかを知り、考えるためには必読の本だと思います。この2冊を読めば、世界のエネルギーに関して考える基本的な知識を得ることは出来ると思いました。

    硬い本ばかりでは疲れるので、今流行っている?ものを紹介します。

  4. 中華思想を妄信する中国人と韓国人の悲劇』ケント・ギルバート、講談社α新書\840+税
  5. 『保守の真髄』西部邁、講談社現代新書、¥840+税
  6. 『天才』石原慎太郎、冬幻舎、¥500+税

    などなどです。天才は田中角栄の話ですが、文庫本で500円になったのでお薦めです。私の若い頃は悪だが、学歴社会、名門社会に切り込んでいきながら、常に刑務所の塀の上を歩きつつ、なかなか塀の内側に落ちずにいたことで、人気のある政治家でした。最後は塀の中に落ちてしまいましたが、かつての日本人の逞しさ、生きる力を思い出させる面白本です。


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